花の浮島と歌って踊る宿 45・46日目
6月3日、稚内市内のみどり湯にて起床。朝一のフェリーに乗り込む。向かう先は日本最北の有人島、礼文島である。当初は行くか迷っていた島だが昨日の同宿の方の話を聞いて行くことにした。宿ももちろん決めてある。日本三大バカユースホステルの生き残りとして名高い桃岩荘ユースホステルだ。港に迎えに来ていたヘルパーさんは初めての僕にも「お帰りなさい!!」と大きな声で言う。この時点で多少押され気味である。
宿のトラック、ブルーサンダー号エースに荷物を預け、出発しようとしたところでヘルパーさんに、「見送りいっしょにやろうよ!」と言われ、何もわからないまま見送りに参加する。そこでの歌や踊りにしょっぱなから衝撃をうける。例えるならみんながある程度酔っ払った飲み会に遅れて参加するような感じだ。しかしここにいる人は全員シラフ。これからの宿泊に多少不安を感じつつ自転車で島を見るために出発する。
綺麗な海とくっきり見える利尻富士を横目に追い風に乗ってぶっ飛ばす。しかし礼文島は一本道しかないため帰りの向かい風に憂鬱になる。
まず向かったのは島で一番綺麗な海が見えるという澄海岬。途中強烈な向かい風と長い登り坂に苦しめられるが、レブンアツモリソウという花を見たり、バスの観光客の方に励まされながら進む。そしてやっとの思いでついた澄海岬は素晴らしい眺めだった。
登り坂を登りきった所。風で前が向けないくらいだった。
澄海岬の景色
切り立った崖と青い海のコントラストが美しく、その雄大な眺めはジュラシックパークの世界の様だった。いつのまにか北海道の礼文島からコスタリカのイスラ・ヌブラ島に来てしまったようだ。となりでジョン・ハモンドが「ようこそ、ジュラシックパークへ」と呟いているような気がした。崖の上からプテラノドンが飛び立ち、その向こうに見える丘にガリミムスの群れが走っていても何ら不思議ではない景色だった。
澄海岬の景色をたっぷり堪能した後は、再北限の岬、スコトン岬へ向かう。変な名前だが、アイヌ語で「大きな谷にある入江」という意味らしい。変な、というのはあくまで一つの主観によって形成されるもので一方的にこれは変だ、と決めつけるのは危険だ。といった高尚なことを考えていられないほど風が強く、多少のダメージを負いながらスコトン岬に着く。
うーん、綺麗は綺麗なんだけど先ほどの澄海岬には及ばない。順番を間違えたようだ。皆さん、礼文島に行った際は先にスコトン岬に行くことをオススメする。
向こうに見えるのはトド島。いまは無人島である。
その後は桃岩荘に向かう。その道中で信じられないぐらい綺麗な海に出会う。
まるで沖縄のような白い砂浜に高い透明度の海。そして日差しは暖かい。あまりにも気持ち良くて1時間ほど海を眺めながらボケーっとしてしまった。
宿に到着し、扉を開けると宿全員によるお出迎え。「おかえりなさーい!!!」と迎えられる。最初が肝心、ナメられたらおしまいだと思い大声で返す。「ただいまーー!!!」。今思うとこの時点で多少染まっている。その後十分後には迎える立場に。
そして夕食後には桃岩荘名物のミーティング。ヘルパーさんが全身全霊で盛り上げる。歌もいくつか歌い、みんなで踊った。初日は分からないことも多く、ついて行くことに必死だった。それと罰ゲームでみんなの前に立たされもした。ヘルパーさん、人選分かってらっしゃる。
これはヘルパーさんですよ。体張ってます。
6月4日は4時半に起床して、トレッキングの準備をする。挑むパーティの構成は埼玉から日本一周ライダーの鬼島津、日本百名山を制したおばぁちゃん、そして皆さんご存知鉄人四柳だ。 ちなみにこのコースの名称は「愛とロマンの8時間コース」。このメンバーに愛もロマンもヘチマもねぇ。
下り坂は基本小走り、見所である岬は見ない、高山植物も基本無視するという荒業で宿の人も引くぐらいのハイペースで歩をすすめる。ちなみにこの中で一番早かったのはおばぁちゃん。通学路が熊野古道だったと豪語する女傑である。本来2時ごろ着く休憩ポイントに12時過ぎに着き、桃岩荘名物の圧縮弁当を食べる。ご飯三膳分の白米が圧縮されたボリューム満点の弁当だ。しかし今年は長年の研究と努力の結果お米がふっくらしているらしい。どういうことかは皆さんで想像してもらいたい。
精鋭。
ラストスパート
夕日が眩しい。
通常10時間かかるコースを6時間で完歩し、出迎えをうける。この時も歌に踊りだ。今シーズンのレコードであり、破られないことを願う。ちなみに歴代最速だと15時ごろに完歩したらしい。標準到着時間が18時であることからどれだけ早いのかお分かりいただけるであろう。ちなみに僕たちは17時頃完歩した。
そして再びミーティングの時間。昨日よりも視野が広く楽しめた。2日目なので歌や踊りも少し覚えてきて1日目よりも楽しかった。お約束のネタも多少あるので二泊以上をオススメしたい。明日には帰ることを思うと寂しくて、記憶に焼き付けようと必死で歌って踊った。必ず再訪することを誓って就寝。
全身全霊で楽しませようとしてくれる姿に心震える。
宿のみんなで集合写真。このアットホームな雰囲気が心地よい。
走行距離ならぬ歩行距離 約30キロ