4287のよろっと自転車日本一周旅

よろっと旅にでようや

134日目 魔境、紀伊半島

9月1日、公園にて起床。毎月1日には和菓子で有名な赤福が「朔日餅」というものを出すらしくあわよくば食べようと思い5時ごろ目を覚ます。しかし、東京でも見たことがないくらいの大行列で心折られてしまう。

どうりで昨日泊まった公園の駐車場が一杯だったのか、みんな車中泊しながらでも食べたい朔日餅とはどんなものだろうか、そんな風に興味は湧いたが行列に並ぶのが死ぬほど嫌なので伊勢神宮に朝イチで参拝する。

大体観光地は朝行けば空いてるものだが1日の伊勢神宮はどうやら違うらしい。前日の方が空いていた。

それでも神々しい雰囲気はなんら変わっていなかった。図らずも二年参りならぬ二ヶ月参りを済ませ、テントに戻って撤収する。

しかしまだ朝も早いためベンチでもう一眠りする。最近眠くって仕方がない。

8時ごろにノソノソ起き出し、自転車に荷物を積み、走り出す。野宿していた公園の隣にある競技場で中学校の陸上大会が行われていたので荷物満載の自転車を中学生にジロジロ見られながらの出発である。この中から僕の自転車を見て旅立つ人がいるのだろうか、いやいない。

出発したはいいものの朝ごはんがまだだった。毎日食パンにマヨネーズをかけて食べるのも味気ないので赤福を食べに行く。

おかげ横丁は朝っぱらからすごい人出だった。

伊勢を後にし伊勢志摩半島を突っ切る形で太平洋側を目指す。

しばらく山越えのためひたすら登る。のどかな田舎の景色に癒されながら汗をかいて登る。

不思議とどこにでもあるようなこの景色に心震えてちょっと動けなくなってしまった。いままでの道のりでいくらでも見てきたような景色だったがなぜか心にスッと入ってきた。今思えばこの時から紀伊半島の虜になっていたのであろう。

そして太平洋側に出ると景色は一気に変わる。リアス式海岸特有の急峻な地形によってアップダウンのオンパレードだ。

三陸海岸を走ったときのことを思い出しながら一つ一つ坂を越えていく。この時までは心から景色を堪能し、楽しんでいた。

しかし峠をあと2つ越えれば目的地というところで事件は起きる。まずは滝のような大雨である。その前にも一回通り雨のようなものがあり雨宿りしていた。その雨が止んで峠に挑み始めた途端に再び大雨が降ってきた。紀伊半島ではこの後の日々も毎日雨に降られない日はないレベルだった。決まって午後に夕立のようにザッと降る。

この時は峠だったので雨宿りする場所などもちろんなく、傾斜もこの日一番だったので本当にムカついた。雨に濡れることを防ぐ手立ては無くびしょ濡れになりながら坂を登る。あまりのムカつきに大声でブチギレながら進んだためこの後喉が痛くなった。山の中だし雨の音でかき消されていただろうがあの時ケモノのような声を聞いた方には申し訳ない。安心してください、人間です。

頂上のトンネルの中でしばらく雨宿りをし、荷物を雨装備に整えて再び雨の中に飛び出す。スマホも圏外なので覚えた地図を頼りに進む。しばらく坂を下るとさっきまでの雨が嘘のように晴れる。山の上だけかとも思ったが路面が濡れているので本当にさっき上がったみたいだ。

峠を下りきり麓にあったコンビニで休憩している時、ふと山の方を見るとなんとも神々しい景色が広がっていた。さっきまであんなに怒っていた気持ちもスーッと落ち着き、また紀伊半島を好きになっていた。

さて、あと一つ山を越えれば本日の目的地に着く。気合いを入れ直し再び漕ぎ出し、すぐに登り坂へ。登りに入っていくらも経たないうちに突然ギアが変わらなくなり、ペダルも回らなくなる。

自転車を降りて見てみるとチェーンの一部がちぎれかけている。名古屋で変えたばかりのチェーンだったので絶望感も凄まじかった。チェーンなんて自分で治せるはずも無くトボトボ山を登り、トンネルを越え、下りになったらペダルを回さないように気をつけながら乗り、なんとか目的地の道の駅に辿り着く。この時の僕の顔は間違いなくひどいものだったろう。

道の駅紀伊長島マンボウに辿り着き、職員の方に近くの自転車屋の場所を聞くがどうもはっきりしない返事。なぜならその自転車屋を経営されている方がご高齢の為、店を閉めたとどこかで聞いたらしい。しかし一緒に話していた地元の人はまだやっていると言う。とにかくこの日は休むことにし、明日その店に行ってみることにする。

この後道の駅でここらの名物であるサンマ寿司とビールを買おうとしたらオマケにマンボウの唐揚げとウツボの唐揚げをくれた。その優しさがなんとも染み入る。

道の駅紀伊長島マンボウの横にあった東屋の中で就寝。しかしなかなか寝付けない長い夜だった。

走行距離 60キロ

伊勢市→道の駅紀伊長島マンボウ

にほんブログ村 旅行ブログ 日本一周(自転車)へ
にほんブログ村